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「・・・・・・・・・・・・・」 
 
 
しゅうは黙って私の目を見ている。
その真っ直ぐな視線は夏の太陽から届く紫外線のように、
皮膚を通り越して細胞までをも破壊してしまいそうなくらい鋭い。
彼の頭の中では、
あたえられた演算式を猛烈なスピードで解いているコンピューターのように、、、
或いは、戦い終盤の「将棋棋士」のように、脳細胞が活発に動いているに違いない。
これから起こりうる様々な状況の全てを想像し、その対策方法を導きだしているのだ。
だから、あんなに鋭い視線を私に送ってくる。
私の「誰なの!!」という質問をあの視線で食い止めているのだ。
その効果は絶大で、ともすれば
「なんとか言ってよ!」 
   
と大声を張り上げてしまいそうな私の揺れる心を
大きな手で鷲づかみにしているかのようだ。 
     
ゴクリ・・・

その視線の鋭さに固唾を呑んだのはしゅうではなく、私だった。
「・・・・・・・・・・・・・」
それでも、私から目をそらすことは出来なかった。
逸らしたら、、、その次の瞬間、しゅうの圧倒的な言葉の攻撃で、
今夜の事を夢物語にされてしまいそうな気がしたのだ。
もっとも、その時、私は心のどこかでそうして欲しいと願っていた。  
     
なんだ、、、あれは夢だったんだ。
パソコンに書かれていた事は、しゅうのフィクションだったんだ。。。  
    
そう納得させてもらうのが一番、楽だと言うことは分かっていた。
しゅうの視線から「厳しさ」が消えた。
そして、しばらく対峙していた二人だったが、先に視線を外し動きはじめたのはしゅうだった。
彼は、私の前を通り過ぎると、お気に入りの革製の椅子にドカリ!と腰を落とした。
そして、ノートパソコンを「ぱたり」と閉じた。
「ガールフレンド」
ガールフレンド!? 確かにしゅうはそう言った。
あれだけ長い間、熟考して出した答えが
ガールフレンド!?
バカにしないで!
スマートな貴男らしくないわよ!
高校生じゃあるまいし、この期に及んで「ガールフレンド」はないでしょ!
「セックス有りのオンナ友達」
今度は私の事を見ながらはっきりとそう言った。
「お店の子?」
「お店の子?従業員には手を出さない。」 
   
「水商売の子?」
「イヤ、違う」 
   
「じゃぁ、、、誰?」
「誰?って、、、だからオンナ友達だよ。 体の関係があるオンナ友達だ」 
    
「はぐらかさないで!どこの誰よ!」
なんの意味も無い会話であることは分かっていた。
聞けば聞くほど状況が悪化するのも分かっていた。しかし、あの助手席に座っていた女の存在が
朋美、、、と言う女性で、しゅうが少なからず好意を持っていて、体の関係もあると知った今、
「意味の無いことだから」と言って黙っている訳にはいかなかった。
少なくとも、私はしゅうの妻なのだ。
「どこの誰!?」
声は高くなったが大声を出すことはなかった。
怒鳴っちゃえばいいのに! ストレートに表現すればいいのに!

耳元でそんな声が聞こえた。
感情を抑え込んでいるのは私の理性なのか、自尊心なのか?
そりゃ、、、自尊心でしょ?
また、誰かが耳元で囁いた。
あんなオンナのせいで、取り乱した姿をしゅうに見せたくない。
「既婚者だが、別居中。と言っても、離婚は秒読みだ。
  子供なしの33歳。 神奈川に住んでいる。
    名前は、、、もう読んだよな。 トモミ。名字は知らなくてもいいだろ?」
「33歳、、別居中、、、」  
     
やっぱり、30代だった。しかしその事実が私の爆発寸前の感情の中から
「怒り」を引っ張り出してきた。
「しゅう、、、あなた、勘違いしてない!?」

今度は私の番だ! 
    
私は怒りの感情を全て眼球に集中させ、紫外線よりも強い視線をしゅうに投げかけた。
  
 
 
 
   
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