この記事の前編はこちら♪





成田を飛び立って、6時間
マルペンサ空港までもあと6時間ほど、、、

ミラノと東京の中間点あたりを飛んでいることになるのかしら?


いつもなら、隣の席にはしゅうが座っている。
海外旅行に限らず、国内旅行でも、もちろん、新幹線に乗るときでも、
多くの夫婦がそうするように、2人はいつも並んで座っている。 

寒がりな私は飛行機に乗るとき夏だろうが、春だろうが、
必ずブランケットをもらって膝の上にかけている。
そして、機内が暗くなってウトウトとしながらも、
ブランケットの下にしゅうの手を引き込み、その大きな手を握っているとやはり安心するのだった。

でも、今回の旅行に同伴者は居ない。
しゅうは私に先立つこと10日前、ヨーロッパとは反対の アメリカ・ニューヨークに旅立った。
日本の東京でいつも一緒に暮らしていた2人が、今、地球の反対側に居る。

小学生の頃、机の上にあった小さな地球儀を思い出した。
そこにあった日本列島は、私がイメージしていた日本とは違い、地球の中では
まるで小さな虫のような存在だった。そして、改めて地球の大きさを実感したのだ。

おそらくは、ロシア上空を飛行中の私と、ニューヨークのホテルに滞在しているしゅう。
2人の間にある、圧倒的な「距離」に不安を感じると同時に、、、
例えようのない、寂しさに襲われた。

「私は、、、どうして、この飛行機に乗っているのだろうか?」



機内は明かりが落とされ、多くの人が浅い眠りについている。
私の隣の女性も、背もたれを倒し、ブランケットをあごまで引き上げて目を瞑っている。
もっとも、眉間に浅くシワを寄せているところを見ると、寝ている訳ではなく、
とりあえず、体を休めておこうと無理矢理、睡眠状態に入ろうとしているようだった。
私も彼女にならって目を閉じた。
色々と考えなくてはならない事はたくさんあるのだ。
ミラノ到着まであと、6時間くらいか、、、 
ここ数ヶ月でおこった様々な事をゆっくり反芻する時間はタップリとあった。
「浮気」
どの夫婦にもある夫婦間のトラブル。
私も幾度となく旦那の浮気に悩む友人達の相談に乗ってきた。
その、ありきたりな「悩み」に自分自身が飲み込まれ、翻弄され、振り回された数ヶ月間。
私に夫公認の「ボーイフレンド」、しゅういわく「愛人」がいるがために複雑にねじれた感情が
関係修復を妨げた事は否めない。
しかし、私の愛人の存在がしゅうの浮気を許すことにはならない。
なぜなら、もともとはしゅうの強い希望があって、この「愛人ゲーム」ははじまった。
良い子ぶるつもりはないが、当初、私はこの遊びに強い抵抗感を持っていた。
嫌々、、、そう、いやいやはじめたのだ。
「亭主の好きな鳥打ち帽」

そうよ、あなたが望んだからかぶっただけよ。
お前に若いボーイフレンドがいるのだから、俺も遊んで良いだろ?
という条件付けをするのならば、公認のボーイフレンドなんかいらない!
交換条件にするのは駄目よ!
それが、私達夫婦の約束事になっていた。
自分だけ楽しい思いをして不公平だ。身勝手だ。 と言われるかも知れないが、
嫌なものは嫌なのだ。それを曲げてまでボーイフレンドが欲しいとは思わない。
もちろん、それまでだって、
しゅうが聖人君子のように「遊び」をまったくしていなかったとは思っていない。
ああいう仕事をしているのだから、普通のサラリーマンよりも出会いの場所は多いだろうし、
女性に接する時間もあるだろう。 或いは、、、仕事が不規則なのを利用して
平日の昼間に自由な時間を作る事だって可能だ。
本人が
「水商売のおねえちゃんにはもてるんだぞ」
と言うのはあながち嘘ではないと思う。
外見的にも金銭的にも、プロの女性から好かれる要素は揃っている。
であれば、そう言う女性達とある程度の関係になったとしても不思議じゃない。
でも、だからと言ってそういう事を想像することは決して楽しくは無いし、
もちろん「公認」にするつもりも無い。 
もし、万が一浮気をするのであれば、、、絶対に私に分からないようにやって欲しい。
と言っても、、、分からなければ浮気してもいい、って事じゃないのよ!
ねぇ、しゅう! そのくらいの事分かっていたでしょ!?


まだ春の訪れ薄い、、、3月の中旬に横浜で見たあの「光景」を思い出した。
決して色褪せることのない、DVD映像のようにあでやかに私の脳裏に蘇るあの「光景」
すべてはあの時からはじまった。
結局、本人に会うことは無かったが、しゅうの車の助手席に座っていた「彼女」
横顔の綺麗な、睫毛の長いあの「彼女」
まさか広い横浜で、しかもあのタイミングで夫婦が出逢うなんて、思っても見なかった。
周到なしゅうが、一日に2度も大ポカをやらかしたあの日。 
私達夫婦にとってはまさに「天誅殺」だった。
それにしても、、、
私はあの夜の事を思い出してみた。
あの時、祥子と別れて家を目の前にして、手にした携帯を無理に閉じて玄関の鍵を取り出した私。
もし、しゅうの携帯にメールなり、連絡を入れていたら、
今日、この場所に私がいる事は無かったかも知れない。
「彼女」がしゅうの愛人という事実を今なお知らずにいたかもしれない。
いや、多分そうだろう。しゅうの事だ、、、度々ドジをやらかすとは思えない。
私が計らずも横浜で見てしまったあの光景、
そしてそこから連想したしゅうに対する「疑惑」を、
やがて私の「思いこみ・思い過ごし」にしてしまったに違いない。
何しろ、車に同乗しているところを見ただけで、浮気の現場を目撃した訳ではないのだから・・・
あの時の「疑惑」は、女の勘というあまりに「不安定」なものの上に成り立っていたのだ。
それが、「今から帰る」と携帯でしゅうに伝えなかったが為に、
あてにならない「女の勘」が的中していた事を知ることになる。
人生なんて分からないモノね。
石ころ一つでどっちにも転がってしまう。
石ころで躓いたにしては、とんだ「大怪我」をしてしまったわね。


私は、暗い機中で、あの夜の事を思い出していた。
←続きは?と思ったらこちらもクリック♪ お願いします