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渋滞が解消される様子はない。
むしろ、夕方の帰宅時間が近づきなおさら酷くなったようだった。
信号が青に変わっても、前がつかえていて数台の車が交差点を渡れるだけ・・・
イライラが爆発した運転手が意味のない「クラクション」を鳴らす。
横断歩道の上に停まってしまった車を縫うように歩く歩行者。
サイドミラーを擦るように、狭い車間をすり抜けていくバイク。
どこかから聞こえるサイレンの音。
渋谷の雑踏は、私の心を逆撫でする。
呼吸が苦しくなる。
脈が早くなっているのか、、、胸、、、心臓のあたりが重い。
耳鳴り・・・ めまい・・・
ラン!いったいどうしたと言うのよ!?
まだしゅうがあの女性と「浮気」をしていると決まった訳じゃないし、
もしかしたら、私とヒデキさんのように夫公認の「プレイ」として彼女に逢っていたのかも知れない。
それに、、、仮に、万が一、浮気をしていたからと言って、
「浮気=心変わり」にならない事はあなたが一番良く知っているじゃないの! 
しゅうが、、、私を心身共に裏切るような事は絶対にしない!私を棄てる事は無い!!!
確信を持っているんでしょ? だから、年下の愛人とのお付き合いも出来る訳でしょう?
クラブのお姉さん達とはかなりの頻度で遊んでいる。きっと、肉体関係がある娘だっている、、、
その延長だと思えばなんてこと無いじゃないの?
自問自答は続く。
なにがそんなに不安なの? 
呼吸が苦しくなって、めまいまでおこすくらいに「不安感」を感じるのは何故なのよ?

車はようやく渋谷の中心部にたどり着いた。
スクランブル交差点の信号が青に変わった。何百人もの人が一斉に動き出す。
圧倒的に若い人が多い。 女同士、男同士、カップル、、、寒い冬がようやく終わって
彼等が着る洋服にも明るい色彩が戻ってきた。
車のすぐ前を歩いている女の子は、軽くカールした髪をなびかせながら颯爽と歩いていた。
かなり派手な化粧と、お尻が寒くない!?と心配したくなるようなミニスカート、、、
スラリと伸びた脚はとても綺麗で、きっと多くの男性の目を引きつけるに違いない。
若いから、、、若いからあの格好が似合うのよね。
若いから、、、
若いから、、、
「若さ」に嫉妬している自分が居た。
改めて外を見ると、10代を中心にほとんどが若い人たちだった。
もっとも、時間帯を考えれば「渋谷」では当たり前の事だ。
その中に、少し落ち着いた、きっと30代半ばの、でも綺麗な女性の姿が目に入った。
顔の輪郭、肌の感じ、、、やはり30代を感じさせる「陰」が見て取れる。
スタイルは悪くない、きっと独身? 既婚者でも「子供」は居ないかな・・・
彼女の服装や雰囲気から「母親」は感じられない。
女の30代は色々な意味で大変な時期だ。
少なくとも私はそうだった。 生活のほとんどを子育てに費やしていた。
2人の息子達は、色々な場面で私を困らせた。 自由になる時間は少なかったし、
夫のしゅうも、おそらく一番忙しい年代だったと思う。
値域とのお付き合い、、、学校行事への参加、、、お母さん同士の交流、、、
PTA、、、 どれもが苦痛だったが、避けては通れなかった。
本業であるピアノ講師の仕事も忙しかった。
息子達が地元の小学校に通っていたので口コミで生徒が増えていった。
髪を振り乱して、、、とまではいかないが、
「渋谷」や「青山」でショッピングを楽しむ余裕なんて無かった。
失われた10年。
いつだったか、、、隣で車を運転している祥子と「30代」をそう表現した事があったな。
信号が変わって、車が動き出すと同時に、
私の心の底にたまっていた澱が、、、その原因が何なのか判ったような気がした。
何故、あえて30代なの?
さっき、目の前を歩いていた派手な化粧をした、脚の長い娘が、助手席に座っていたのなら
まったく、、、しゅうも趣味が悪いわね。。。
と、苦笑いを浮かべて流せたかも知れない。
或いは、私と同世代、、、40代の「疲れた女性」なら、それはそれで許せるような気がした。
でも、30代!?中途半端な気がする。 
しゅうが男として「若さ」に惹かれるのなら20代の女性を選んで欲しい。
同じ年代を歩いてきた、同世代、40代の女性なら、女として共感出来る部分があるから
納得できそうな気がした。
もし、私がしゅうの浮気相手を問いつめたら場合、
20代の女性は
「嫌だなぁ、、そんなにムキにならないでよ。私だって遊びなんだからさぁ、、、
    旦那さんはお金も持っているし、彼氏って言うより「オジサマ」って感じなんだからぁ。
                    分かりました。お返しします」
人を食った口調でそう言うような気がする。 でも、その言葉に逆上するような気はしない。
40代の女性は
「ごめんなさい、、、
     家庭や子供達との事で色々あって、、、主人は仕事ばかりでアテにならなくて、、、
         おまけにセックスレスで、、、 もうお会いしません。約束します」
言い訳をたくさん並べ、低く頭を下げるような気がした。 
そんな彼女のことを「泥棒猫!」となじる気分にはならない。
むしろ優越感を伴った「同情」すら感じかも知れない。
でも、、、、
30代の女性は、独身既婚を問わず
「恋愛は自由なんじゃないですか?奥様には申し訳ないと思うけど、、、
          しゅうさんを放っておいた『妻側』にも責任があるんじゃないかしら? 
     彼が私と別れたい、、、って言うなら仕方ないとは思うけど。
          不倫だけど、大人同士なんだから、本人の意思を尊重すべきだと思うわ」
そう言いながら、煙草ケースからメンソールのタバコを取り出して火を付けそうな気がした。
冗談じゃないわ!
固く結んだ唇が微かに震えている。
 
 
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