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今日は、、、祥子で良かった。
これは本音だった。テープルに並んだこってりとした料理とは正反対に
あっさりとした性格の祥子で助かった。 
「ねぇ、、どうしたの? 話しなさいよ、、、水くさい!」
例えば、涼子のように好奇心旺盛の友人が一緒だったら、
私は爆発していたかも知れなかった。
帰りの車の中でも、不機嫌な様子を見せるワケでもなく
淡々と運転をし、時折言葉をかけてくれる、、、そんな気遣いをしてくる祥子がありがたかった。
もし、、、もし、祥子だったらどうするんだろう?
彼女には3つ年上のご主人が居た。
やはりファッション関係の仕事をしている人で、若い頃は美男子で素敵な人だった。
話も面白くて、さぞかし女性にもてるだろうなぁと、思っていた。
10年ほど前にバイクの事故で右足に大怪我を負い、後遺症が少し残ってしまった。
それでも、性格は変わらず明るかったが、運動をほとんどしなくなったこともあって
体重100キロを超す巨漢になってしまった今、あの「モテ男」の面影は無い。
あの人懐っこい笑顔からは「不倫」の匂いはしない、、、
でも、昔は随分、彼の女癖に祥子も辛い思いをしたはずだ。
私も一度、、、相談(と言うよりも、愚痴を聞かされた、、)された事があった。
涙を流すことろを見せない祥子が、目を腫らして「離婚するかも・・・・」
そうポツリと言った彼女の表情は忘れられない。
祥子に相談してみようか、、、、
「バカね!お店の女の子じゃないの?」
きっとそう笑い飛ばしてくるような気がした。
納得はできないかも知れないが、とりあえず、今日のこの不快感は解消されるように思えた。
「ねぇ、祥子、、、これからちょっと付き合ってくれる?」
「これから? いいよ、、、付き合うわよ」
「家は大丈夫なの?」
「ウチ!? ウチは平気よ。 なんなら夜中までだって付き合うよ」
「ありがとう、、、」
第三京浜を降りた私達は、246を右折し、そのまま渋谷に向かった。
「やっぱり、、、なんかあったんだな?」

祥子の口調は相変わらずだったが、その時の私にはぞんざいな口調がむしろ心地良かった。
「ウン、、、ちょっとね」
夕方の渋滞が始まったのか、車はなかなか進まない。
その時、、、
車がしゅうの事務所に近くを走っている事に気が付いた。
どうしよう?しゅうになんて言おう、、、

帰りは5時過ぎと伝えてあった。
そうだ! レッスンもあったんだ!

やはり、祥子の言う通り、今日の私はまともじゃないわね。
すっかり忘れていた。
時計はすでに4時を回っている。
私は携帯を取り出すと、まずは生徒に連絡を取った。
もしかしたら、学校帰りに直接来るかも知れない、、、 連絡が取れなかったらどうしよう?
そう心配したが、幸いな事に2人の生徒は携帯を持っていた。
電話で生徒にレッスンの振り替えを伝える。
生徒との電話を終えた私は、しゅうに連絡をしようとしばらく携帯のボタンを見つめていたが、、、
彼の声を聞いたら、なおさら混乱してしまいそうだった。
だから、携帯メールで
「祥子と夕ご飯を食べてから帰ります。10時頃かな。
                    レッスンはおやすみにしました」
とだけ連絡をした。
5分ほどすると、しゅうから返信が届いた。
「了解。楽しんできて。今日の俺は早帰りだよ」
最近、忙しいしゅうには珍しい。
海外、たしかニューヨークと言っていたが、
向こうの友人と共同でレストランを出店する計画を進めていて、
時差の関係もあって、夜遅くまで事務所に詰めている事が最近は多かった。
もしかしたら、、、罪滅ぼしのつもりかしら?
助手席に座っていた女性と食事を一緒に取って、
その後、どう過ごしたのだろう?
仕事の打ち合わせ? 仕入れ? 営業? 
いいえ、それはない。
もし、仕事関係の女性だったら、しゅうの性格からして私に言うに決まっている。
クラブの女の子と同伴することさえ私に話していくくらいなのだから。
以前、ゴルフに連れて行って、その後で食事、そしてお店へ同伴。
自宅に戻って延々とその話をされたときにはさすがの私もぶち切れた事があった。
しゅう曰く、「やましいことが無いからこうしてお前に話せるんだよ」
そのしゅうが、私との遭遇をおそれていたのだから、逆説的に考えて
「やましいこがあるから」という事になる。
あの後、2人はどこか静かな場所で親密な時間を過ごしたに違いなかった。
胸の奥が締め付けられる。
しゅうの心の中の罪悪感が、
    久しぶりに早く帰って私を外食にでも誘うつもりだったのかしら?

「こら! そんな怖い顔してたら、駄目だよ。 どんどんマイナス思考になるぞ」
祥子が大きな声を出した。
きっと、眉間にしわを寄せて、厳しい視線を流れる街並みに向けていたに違いなかった。
「ごめん、、、また考え事してた。」
「さっきのメール、、、しゅうちゃんからでしょ?」
「そう」
しゅうの事を「ちゃん」付けできるのは祥子だけだ。
「と言うことは、ランの悩みの原因はしゅうちゃんなんだ」
「そう・・・」
「なに? 浮気でもしてる?」
「そうかも・・・」
「まぁ、いい男だもんね。浮気の一つや二つはあるだろうな」
「そうね」
「それに、あんただって、年下の彼とよろしくやってるんでしょ?
     だったら、そんなに悩む事もないでしょうに、、、
         浮気なんて、一過性のモノ。精神的に離れていくなんて事はない、って
     そう言っていたのは、他ならぬアンタよ。」
「そうだったね」

以前、彼女には、なぎさとの付き合いの事を告白したことがあった。
彼女なら、きっと受け入れてくれると思ったからだが、その予想に間違いは無かった。
「へぇ~~~ ランもなかなかやるね。」そう言って、興味津々に私の話を聞いてくれた。
「こういっちゃお終いかも知れないけどさ、お互い様!って割り切っちゃったら?」
「・・・・・・・・・・・・」

「それに、、どうなの?アンタの勘違いって事はない?」
口調が少し尖ってきた。私のことを問いただすかのような厳しい口調だ。
「猜疑心を持ってしまうと、なにを見ても、、、怪しい!?って感じるようになる。
      今のアンタはそんな感じじゃないの?」
「そうかも」
祥子は相変わらずストレートにモノを言う。しかもどれも的を得ている。
口調もはっきりしていて、異論をはさむ余地もない。
「なによ! 『そう』しか言わないのね。 
   そこまで分かっているんなら、私が相談に乗る必要も無いじゃない」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
返す言葉が見つからない。
信号が赤になって車が停まった。
祥子がハンドル私の方を見ながら
「とは言え、、、ランにしては珍しいくらいに落ち込んでるね
                 なにか、確固たる証拠でも掴んじゃった?」
「確固たる証拠か?と聞かれると自信は無いけど、
                私の中では、確信に近いものがある」
「そう」
しゅうの車の助手席に乗っていたところを目撃しただけ。
たったそれだけの事だが、あれは「仕事上」の事じゃない!
確信があった。
証拠は無い。しかし、、、今までの結婚生活や、夫婦交際を進める上で
しゅうとした色々な話、彼の考え方、行動パターンを考えたとき、
ここ一ヶ月ほどの彼の行動、そして何より数日の間のらしくないやりとり。
あれは、「仕事上のパートナー」じゃない!
愛人。
女の勘ではなく、しゅうの妻として確信に近いものがあった。


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